プリンター材料材料強度試験―PEEK-CF(カーボンファイバー入り)について

PEEK-CF試験片の引張強度測定結果

弊社で取り扱ってます、INTAMSYS社PEEK-CFは ①強度 ②耐熱 ③耐薬品性 これららの特性に優れるPEEK材に炭素繊維10%を配合した材料です。

炭素繊維で強化されているため、剛性とクリープ強度が高くなっているのも特徴といえるでしょう。PEEKと比べて反りが軽減され寸法精度にも優れます。 用途としては自動車、原子力、エレクトロニクス、航空宇宙分野のほか、一般産業の重要な分野で多く使用されています。

今回はINTAMSYS社PEEK-CFで試験片を作成、引張強度を測定しました。

※引張強度とは、試験片サンプルがの両端を破断されるまで引っ張り、その張力に対する
試験片サンプルの強度を測定し求められる機械的強度の値です。試験片がどの位、強度を持ち、どの程度まで伸びるかを測定することで、弾性率や降伏応力、ヤング率、ポアソン比を求めることができ、試験片サンプルの機械的特性を知ることができます。
引張強度を英語で表現するとtensile strengthです。

INTAMSYS社のオフィシャルデータでは、PEEK-CFの引張強度は87.4MPaとなっています。
弊社でも測定用としてISO527試験片を10本造形しました。
そのうち5本を熱処理としてアニーリングしました。 熱処理(アニール)の方法として、試験片を恒温機に入れ150-200℃で約3時間焼入れを行います。

※アニールとは組織を軟化させ展延性を向上させる熱処理のことを言います。 プラスチックの成形工程や3Dプリンターでも同じことが言えますが膨張した樹脂を 急冷却される際、分子配向歪み・残留歪み・成形収縮・後収縮等が発生します。

このような歪み(残留応力)を持った適切な処理をほどこなさないと、
①経時変化で歪みが生じて形状の変化
②収縮や伸張による寸法精度のずれ
③機械加工時や、溶着など加熱時の割れ
④塗装や溶剤での加工・処理時などの変形
などが生じることがあります。

試験片の形状

造形の方向は下の図に示すようになっており、X-Y方向の引張強度測定用に造形します。

造形の設定条件は以下通りになります。
機種:FUNMAT PRO410
積層ピッチ:0.2mm
充填率:100%
印刷温度:420℃
チャンバー温度:90℃
プレート温度:130℃
冷却ファン:オフ
完成した試験片は産業技術センターに送付し、引張強度を測定していただきました。 結果は以下の通りになります。

熱処理あり

弾性率[GPa] 降伏点 破壊点
引張強さ[MPa] 伸び率[%] 引張強さ[MPa] 伸び率[%]
1 3.0 91.8 3.7
2 2.9 86.9 3.4
3 3.2 92.2 4.0 最大値に同じ
4 3.0 90.5 3.8
5 3.0 89.7 3.7

熱処理なし

弾性率[GPa] 降伏点 破壊点
引張強さ[MPa] 伸び率[%] 引張強さ[MPa] 伸び率[%]
1 3.0 74.2 4.1 72.8 5.2
2 3.0 74.7 4.2 69.8 5.7
3 3.3 73.9 4.2 70.9 5.8
4 2.9 73.0 4.2 69.8 5.7
5 2.9 73.5 4.2 69.4 5.3

試験片 各5本ずづの測定平均値

弾性率[GPa] 降伏点 破壊点
引張強さ[MPa] 伸び率[%] 引張強さ[MPa] 伸び率[%]
アニールあり 3.02 90.22 3.72 90.22 3.72
アニールなし 3.02 73.86 4.18 70.54 5.54
結論として熱処理(アニール)した場合のPEEK-CFはXY方向に引張強度は約90MPaとなっており、かなり強度が向上したといえます。
INTAMSYS社が提供する数値ともほぼ一致しておりINTAMSYS社PEEK-CFの引張強度は同じINTANSYS社のABS(29MPa)の約3倍、PC(60MPa)の約1.5倍になります。 熱処理(アニール)していない場合でも、PCより強くPAまたはPA-CF並の引張強度が得られました。

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